生命保険のカラクリ、岩瀬 大輔(著)

「生命保険は、文明がこれまでにもたらしたものの中で、悪党がもっとも利用しやすい、便利で永久的な巣窟であると信ずるようになった」
— エリザー・ライト(生命保険のカラクリより引用)

僕は国民健康保険以外の保険に入っていない。それで、以前から周りの人に何か保険に入ったほうがいいと言われていた。僕はこういことは徹底的に調べるタイプなので、なかなか時間がとれなく先延ばしにしていた。そして正月休みに10冊くらいの本をまとめて読んだ。そして素晴らしい本に出会った。ここ数年で読んだ本の中でベスト3に入るといっても過言ではない。多くのデータに基づいた解析、ロジカルな文章、身もふたもない事実の惜しげもない暴露、読者を本文に引き込む面白い業界エピソード。保険に入ることを検討している人はマスト・リードだが、すでに保険に入っているにとっても、自分の頭がいかにお花畑なのか気づかされる、という点において大きな収穫になるだろう。生保含め保険業界は、自分の頭ので考えることを放棄した人がいることで成り立つビジネスモデルで大きな収益を上げているのだ。

まずこの本の内容だが、タイトル通り生命保険のカラクリを説明している。例えば、

  • 保険料のうちどのくらいが保険会社の取り分になるのか
  • 掛け捨型と貯蓄型のどちらが保険会社は儲かるのか
  • 商品開発の観点は顧客のニーズではなく、いかにぼったくれるか
  • 日本の生命保険市場は先進国でもっともぼったくれる
  • 死亡率のを高く見積もることで、利益の大半を得ている
  • 保険料を決めるのに使用される死亡率は実際の死亡率よりも20%高い

などである。そのうえで、契約者がとるべき行動も示唆している。著者の岩瀬大輔氏はハーバード・ビジネススクールの留学後に現社長の出口治明氏と2006年にライフネット生命を創業した人物だ。生命保険業界に身を置いているので、本書の内容も盲目的に信じてはいけないが、それを差し引いても、間違いなく良書である。

この本には重要なことがたくさん書かれているが、強く印象に残ったことは次の2つだ

1.生命保険はに「保障」と「貯蓄」の二つの機能がある
当たり前のことなのだが保険会社からのぼったくりから身を守るためにはこれを理解することが不可欠だ。よく考えるとわかることだが、大半の人に見過ごされている部分だ。「保障」は死亡やケガなど万一の事態に事態になったときにお金をもらうための機能、「貯蓄」とは将来のためにお金をためる機能である。生命保険に入って保険料を支払うと、「保障」部分と「貯蓄」部分は別々のプールに入れられる。次のようなイメージだ。

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貯蓄型の保険に入っているAさんの場合は保険料に貯蓄の部分と保障の部分が含まれている。Bさんと比べて貯蓄の分だけ保険料は高くなる。貯蓄の部分は満期になると戻ってくるが、保障の部分は無事に満期を迎えることができれば戻ってこないのである。こう考えると、かけ捨ては損ではないのがわかるはずだ。Aさんが満期でもらえるのは、保険料に上乗せされた部分であって、自分のお金がもどってくるだけなのだ。むしろ、保険会社は貯蓄の部分からも手数料をとっているので、Bさんのように掛け捨てにして、保険料の差額を自分で運用した方がいい。インデックスファンドやETFなど手数料が安い金融商品はいくらでもある。
さらに保障部分の手数料に注目してほしい。貯蓄部分からは数パーセントしか手数料はとれないが、保障部分から30~60%の手数料がとられる。金融商品はゼロ・サムゲームなので保険会社に30~60%のてら銭がとられている時点で、期待値は0.7以下なのである。これはギャンブル(不幸なことが起こると当選するギャンブル)と考えるとパチンコ以下だ(パチンコのてら銭は10~15%)。ここから言えるのは、保険は掛け捨てにして貯蓄は自分でする、保障は最低限にする(残念なことの保障は保険会社しかできない)、だ。保障の部分が保険会社が儲かる部分なので、「手厚い保障を、、」などといって保険料を上げようとしてくるが、騙されてはいけない。販売員は利益率のいい保険の契約を取るとインセンティブを多くもらえるのだ。あなたのことは全く考えていない。

2.生保の利益の大半は死差利益からくる

次の図を見てほしい。これは生命保険の利益がどこから来るか示したものである。

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資料出所:生命保険のカラクリ

  • 利差益・・集めた保険料を運用することによって得られた利益
  • 費差益・・保険料に織り込んでいた経費よりも実際の経費が下回ったことによる利益
  • 死差益・・見積もった死亡率よりも、実際の死亡率が下回ったことにより得られた利益

この図をみると明らかだが生保の利益の大部分は死差益からなるのだ。これは保険契約者は保障の部分でかなりボったくられていることを意味する。そして注目してほしいのが利差益である。バブル期に高い利回りを掲げて契約者を集めたがその後にバブル崩壊(つまり保険金を運用することで利益をあげるのに失敗)。そして保険会社は、その後に保険に入った人に必要以上に高い保険料を課すことによって、自分たちのミスによる損失を保険契約者に押し付けているのだ。

生保業界のずる賢い悪党が、汗水たらしてまじめに働いている善良な市民を食い物にしようと日々企んでいる。僕たちは自分自身や愛する家族を守るために闘わなければならない。そのための強力な武器となるのがこの本だ。
生命保険のカラクリ

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